「障害者のリアルに迫る」東大ゼミ・公式ブログ

東京大学の学生団体『障害者のリアルに迫る』ゼミの活動報告のブログです。

『障害者のリアル×東大生のリアル』読者インタビュー第1弾:書店員・木村麻美さん ~自分についてここまで掘れるのは羨ましい~

『障害者のリアル×東大生のリアル』(ぶどう社)出版から約5カ月が経ちました。そこで「本書がどのように受け止められているのか」を調べるために、読者インタビューを行いました。

 

初回は、紀伊國屋書店新宿本店5階新宿医書センターの木村麻美さんです。木村さんは障害福祉の棚の担当で、出版早々に本書をツイッターで取り上げてくださり、紀伊國屋書店新宿本店では全国トップの販売数となっています。

 

そこで今回木村さんに、書店員として、また一読者として、本についての印象を伺いました。

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Q 『障害者のリアル×東大生のリアル』の第一印象はどうでしたか?

「障害」をテーマにした本って、ハードカバーの重たそうな本が多いんですけど、この本はポップな質感に、表紙もスタイリッシュで、とても手に取りやすかったです。初めは一冊しか入荷してこなかったんですけど、すぐに惹かれました。

 

Q 中を開いてみて、どうでしたか?

まず、構成が分かりやすいです。野沢さんが入り口の文章を書いて、そのあと障害を持つ人の紹介があって、学生の文章が並んでる。

あと、学生の文章のタイトルにインパクトがありました。「見下す」とか「のっぺらぼう」とか。

 

Q では、実際に読んでみてどうでしたか?

仕事柄、障害を持つ方々について紹介している部分は既知のことも多かったのですが、学生の文章には「そうだよね!」と共感するところが多かったです。

最初は「東大生」と「障害者」がどうつながるんだ?と疑問を持っていたんですが、読み進めるうちに、「一個人として、肩書やブランドも関係なく、私を見て!」という通底したメッセージを感じました。

 

Q 具体的に、木村さんの印象に残った箇所はありますか?

南雲さんの部分です。この人の紹介はすごい面白い。学生時代、読字障害によってラブレターが読めなかったときのエピソードにはグッときました。自分で自分の障害の存在を知らないでいることの苦しさなども含め、障害に興味がない人にも読んでほしいです。

 

あと、澤田さんの文章が劇画調で、超面白かったです。セリフで舞台が作れるんじゃないかと思うくらい(笑)

 特に澤田さんが全盲ろうの福島智さんに対して、「生きる意味が見いだせなくて、死ぬしかないように思う時があるのだが、どう思うか?」と聞いたときの福島先生の「まぁどうしても死ぬというのなら止めませんけどね。でもほかの人に迷惑にならないように死んでくださいね」という部分。

 

自分について、ここまで掘ることはないじゃないですか。機会がないと。素直に羨ましいなと思いました。

 

Q 「羨ましい」ですか。

だって、私なんてここ(紀伊國屋書店新宿本店5階新宿医書センター)に来るまで、多様性とか障害者とかマイノリティについてあまり関心がなかったのですが、「障害者福祉」や「発達障害支援」の棚を担当してそれらについて学んだことで、今やっと私も人と比べる必要なんて無いんだなって思えたんです。だから、学生時代からそういう経験をしているのはとても羨ましいです。

 

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Q この本は、一見障害者について書いた本のように見えて、実は学生の文章が大半を占めています。学生の文章の中には内向的な自分語りも多いと思うのですが、どんな印象を持たれましたか?

 

いくつになっても、誰にでも、人には言えない、そういう部分があります。そういうものを言語化してくれて、ありがたかったんです。本当に泣きそうになりました、というか、私は泣いたんですけど(笑)

あと、「本を読むのは扉を開くようなものだ」と誰かが言っていたんですけど、まさにこの本は扉を開くような本だとも思います。いくつもの本を読んできたけど、この本を読んだとき「あーこんな世界もあったんだなー」って。

 

「障害者って、実は近くにいるってことや、自分の中にも割り切れない部分がある」ってことを改めて気づかせてくれました。普段は話題に上らないけれど、みんなどこかにこういう人たちがいるってことを意識していて、モヤモヤを抱えているんだと思います。この本を出してくれて、ありがとうございます。

 

Q 書棚について。この本は「障害福祉」「介護・エッセイ」などの棚に置かれるのですが、他にどんな棚が思い浮かびますか?

 

この本は障害とか福祉の本という見方もできるけど、「ふつうってなんだろう?」って問いかけてる本だと思うんです。だから「ヤングアダルト」コーナーとかでもいいかもしれませんね。

 

Q 最後にゼミの活動について。ゼミ生の中には「障害者を自分探しの種にしているだけなんじゃないか」という後ろめたさもあって、もっと誰かの役に立つ活動をしなきゃな、という意識もあります。

 

見えづらいと思うんですけど、この本を読んでる人たちは、この本に助けられているんじゃないかと思います。この本のためにちょっと時間作って読もう、という行動を引き起こしたのは、この本の力。

 

読んでいる人がどんな感想を持つのかはわからないけれど、こういう本を読んでいる人たちが増えれば、何かが少しずつ動いていくはずです。

 

Q 今日はありがとうございました。

今日は話せてよかったです。昨日からこのインタビューがとても楽しみでした。この数日間、本を持ち歩いていて、一生懸命読みました。こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。

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