「障害者のリアルに迫る」東大ゼミ・公式ブログ

東京大学の学生団体『障害者のリアルに迫る』ゼミの活動報告のブログです。

モデル兼介護福祉士…!?

モデル兼介護福祉士…!?「障害者のリアルに迫る」ゼミが新歓特別講義で講師としてお呼びするのは、週四日都内の特別養護老人ホーム介護福祉士として働く傍ら、介護の楽しさ・価値を多くの人に知ってもらうためにモデルとしても不定期で活動している上条百里奈さん。「人生の中で介護が必要になっても幸せに生きられるように介護を」と熱い思いを持っている。今回の講義では皆さんが介護のリアルについて深く考える機会になればと考えています。

 

 

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【2017年度夏学期も開講します!】

2017年度夏学期も外部講師に野澤和弘氏(毎日新聞論説委員)、また毎回講義のテーマに関わる豪華なゲストをお招きし、東京大学にてゼミを開講することになりました。

今回は、障害者にまつわる問題の中でも
恋愛・身体・生と死・コミュニケーション・セクシャルマイノリティ
をテーマに取り上げた構成となっています。

東大の学生はもちろん、そうでない方々にもぜひお越しいただき、このゼミの空気感を多くの人に肌で感じてほしいと思っています!
学生以外で興味があるという方はフェイスブックや以下の連絡先等に事前に連絡いただければ幸いです。

以下、詳細になります。

開催時間
水曜5限 16時50分~18時35分(一部例外あり)
場所
東京大学駒場Ⅰキャンパス和館
連絡先
メールアドレス:thinkdisability.seminar@gmail.com

 

講義スケジュール

<新歓特別講義>(4月5日)
講師:上条百里奈氏
内容:モデル兼介護福祉士という異色の経歴をもつゲスト講師と被介助者の学生の対談。講師のライフストーリーに加え、「介護」と「介助」の違いにも焦点を当てることで、いずれ能動的・受動的に関わることになる介助と介護について意識・思考させる。


・ガイダンス(4月19日)

テーマ:恋愛
・第一回 (4月26日)
講師:山本翔氏、熊篠慶彦氏
内容:健常者で障害者向けデリヘルを経営している山本氏と、脳性麻痺者で元デリヘル利用者の熊篠氏の対談。一般的にタブーとされる「障害者」と「性」について、その最も生々しい現場にいる(いた)お二人の話を聞き、受講生の「タブー」という価値観を揺るがしたい。
・第二回 (5月10日)
講師:福島智氏、熊谷晋一郎氏
内容:盲聾者の福島氏と脳性麻痺の熊谷氏、東大教員お二人の対談。健常者と比べて、障害者が「恋愛関係」を築くのには大きな障壁が存在する。お二人には自身の恋愛経験を語っていただき、それを通して受講生が「障害者の恋愛」についてイメージを膨らませ、かつ自身の恋愛経験・恋愛観を振り返る機会を作りたい。

テーマ:身体
・第三回 (5月17日)
講師:町田幸子氏
内容:脊髄損傷による中途障害者の町田氏と、先天性障害者の学生の対談。先天性障害と比較した講師の障害に関する経験を聞くことで、中途障害と先天性障害の共通点・相違点を理解したい。「中途障害」は、健常者も大なり小なり意識するテーマである。受講生にとっては、比較的自分に当てはめて考えやすい講義になると思われる。
・第四回 (5月24日)
講師:無し
内容:渋谷と下北沢でフィールドワークを行う。車いすアイマスクなどを使用し、肢体不自由・視覚障害聴覚障害の疑似体験をする。障害者に対する周囲からの視線・社会(健常者)との関わり方・身体的困難などを体験し、講義だけでは得にくい「身体障害者の理解」を進める。また、受講生同士や事務局との親睦を深めることも期待する。

テーマ:生と死
・第五回 (6月7日)
講師:岡部宏生氏と進行中ALS患者
内容:ALS患者お二人による対談。呼吸器装着段階にある岡部氏と進行中患者の方の二つの視点から、体が徐々に動かなくなっていく、人工呼吸器や気管切開手術など死を意識する、といったALSに関する話を聞く。また、両者はゲスト講師の中でもとりわけ「障害」「生と死」という問題を顕在化した方々であるため、この講義は受講生がそれらについて考える起爆剤になると思われる。
・第六回 (6月12日※月曜!)
講師:北山修
内容:ゲスト講師による講義。精神科医としての見地から、精神病やそれを取り巻く「生と死」について話してもらう。第五回の講義で触れるALSという病気は、その進行過程で尊厳死という「積極的な死」の選択肢を与えられる。北山氏には逆に「積極的な生」の選択について語ってもらうことで、受講生それぞれが持つ「生」「死」に関する価値観を見つめなおす機会を作りたい。なお、ゲストは大物アーティストでもある。

テーマ:コミュニケーション
・第七回 (6月21日)
講師:綾屋紗月氏
内容:ゲスト講師による講義と、受講生一人を交えた公開当事者研究。講義前半では、コミュニケーションをテーマ・軸に据えたライフストーリーや、自らの身体や障害の特徴について、また「つながりの作法」や当事者研究の意味などを語っていただく。その上で、後半では受講生からひとり希望者を募り、その人の悩みや痛みを題材に駆け込み当事者研究WSをおこなう。コミュニケーションに関する困難は多くの学生が日常的に直面するものであり、当事者研究という実践を交えて受講生一人一人に自身のコミュニケーションの在り方を見つめなおしてほしい。
・第八回(6月28日)
講師・内容ともに未定

テーマ:性的マイノリティ
・第九回 (7月5日)
講師:講師:交渉中
内容:ゲスト講師の講義を予定。性的マイノリティや、さまざまな家族の形について考える会とする。
・第十回 (7月12日)
講師:学生四人(性的マイノリティ・マジョリティ交えて)
内容:学生四人のパネルディスカッション。このゼミのような場では、情報のやりとりがマイノリティからマジョリティへの一方向であることが多い。この回では性的マイノリティ、マジョリティ双方が性に関して思っていることをぶつけあうことで、疑問におもっていることを解消するだけでなく、当たり前に思っていることについてもなぜ当たり前なのか見つめ直すような機会にしたい。

(感想共有、ディスカッション 7月19日)

『障害者のリアル×東大生のリアル』読者インタビュー第1弾:書店員・木村麻美さん ~自分についてここまで掘れるのは羨ましい~

『障害者のリアル×東大生のリアル』(ぶどう社)出版から約5カ月が経ちました。そこで「本書がどのように受け止められているのか」を調べるために、読者インタビューを行いました。

 

初回は、紀伊國屋書店新宿本店5階新宿医書センターの木村麻美さんです。木村さんは障害福祉の棚の担当で、出版早々に本書をツイッターで取り上げてくださり、紀伊國屋書店新宿本店では全国トップの販売数となっています。

 

そこで今回木村さんに、書店員として、また一読者として、本についての印象を伺いました。

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Q 『障害者のリアル×東大生のリアル』の第一印象はどうでしたか?

「障害」をテーマにした本って、ハードカバーの重たそうな本が多いんですけど、この本はポップな質感に、表紙もスタイリッシュで、とても手に取りやすかったです。初めは一冊しか入荷してこなかったんですけど、すぐに惹かれました。

 

Q 中を開いてみて、どうでしたか?

まず、構成が分かりやすいです。野沢さんが入り口の文章を書いて、そのあと障害を持つ人の紹介があって、学生の文章が並んでる。

あと、学生の文章のタイトルにインパクトがありました。「見下す」とか「のっぺらぼう」とか。

 

Q では、実際に読んでみてどうでしたか?

仕事柄、障害を持つ方々について紹介している部分は既知のことも多かったのですが、学生の文章には「そうだよね!」と共感するところが多かったです。

最初は「東大生」と「障害者」がどうつながるんだ?と疑問を持っていたんですが、読み進めるうちに、「一個人として、肩書やブランドも関係なく、私を見て!」という通底したメッセージを感じました。

 

Q 具体的に、木村さんの印象に残った箇所はありますか?

南雲さんの部分です。この人の紹介はすごい面白い。学生時代、読字障害によってラブレターが読めなかったときのエピソードにはグッときました。自分で自分の障害の存在を知らないでいることの苦しさなども含め、障害に興味がない人にも読んでほしいです。

 

あと、澤田さんの文章が劇画調で、超面白かったです。セリフで舞台が作れるんじゃないかと思うくらい(笑)

 特に澤田さんが全盲ろうの福島智さんに対して、「生きる意味が見いだせなくて、死ぬしかないように思う時があるのだが、どう思うか?」と聞いたときの福島先生の「まぁどうしても死ぬというのなら止めませんけどね。でもほかの人に迷惑にならないように死んでくださいね」という部分。

 

自分について、ここまで掘ることはないじゃないですか。機会がないと。素直に羨ましいなと思いました。

 

Q 「羨ましい」ですか。

だって、私なんてここ(紀伊國屋書店新宿本店5階新宿医書センター)に来るまで、多様性とか障害者とかマイノリティについてあまり関心がなかったのですが、「障害者福祉」や「発達障害支援」の棚を担当してそれらについて学んだことで、今やっと私も人と比べる必要なんて無いんだなって思えたんです。だから、学生時代からそういう経験をしているのはとても羨ましいです。

 

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Q この本は、一見障害者について書いた本のように見えて、実は学生の文章が大半を占めています。学生の文章の中には内向的な自分語りも多いと思うのですが、どんな印象を持たれましたか?

 

いくつになっても、誰にでも、人には言えない、そういう部分があります。そういうものを言語化してくれて、ありがたかったんです。本当に泣きそうになりました、というか、私は泣いたんですけど(笑)

あと、「本を読むのは扉を開くようなものだ」と誰かが言っていたんですけど、まさにこの本は扉を開くような本だとも思います。いくつもの本を読んできたけど、この本を読んだとき「あーこんな世界もあったんだなー」って。

 

「障害者って、実は近くにいるってことや、自分の中にも割り切れない部分がある」ってことを改めて気づかせてくれました。普段は話題に上らないけれど、みんなどこかにこういう人たちがいるってことを意識していて、モヤモヤを抱えているんだと思います。この本を出してくれて、ありがとうございます。

 

Q 書棚について。この本は「障害福祉」「介護・エッセイ」などの棚に置かれるのですが、他にどんな棚が思い浮かびますか?

 

この本は障害とか福祉の本という見方もできるけど、「ふつうってなんだろう?」って問いかけてる本だと思うんです。だから「ヤングアダルト」コーナーとかでもいいかもしれませんね。

 

Q 最後にゼミの活動について。ゼミ生の中には「障害者を自分探しの種にしているだけなんじゃないか」という後ろめたさもあって、もっと誰かの役に立つ活動をしなきゃな、という意識もあります。

 

見えづらいと思うんですけど、この本を読んでる人たちは、この本に助けられているんじゃないかと思います。この本のためにちょっと時間作って読もう、という行動を引き起こしたのは、この本の力。

 

読んでいる人がどんな感想を持つのかはわからないけれど、こういう本を読んでいる人たちが増えれば、何かが少しずつ動いていくはずです。

 

Q 今日はありがとうございました。

今日は話せてよかったです。昨日からこのインタビューがとても楽しみでした。この数日間、本を持ち歩いていて、一生懸命読みました。こちらこそ、楽しい時間をありがとうございました。

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